研究ラボ紹介

新領域開拓

バレンススキップ現象に由来する電荷近藤効果と新奇超伝導機構の物質探索

研究代表者:椋田秀和 物質創成専攻・物性物理工学領域

共同研究者:八島光晴 大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻 

共同研究者:Ian R. Fisher  Stanford university

共同研究者:Ted H. Geballe  Stanford university

共同研究者:P. Walmsley   Stanford university

共同研究者:村上博成 大阪大学大学院工学研究科レーザー研

共同研究者:三宅和正 大阪大学理学研究科附属先端強磁場科学研究センター

共同研究者:伊豫彰 産総研

ドーパントの価数揺らぎと巨大な電子集団が生み出す新しい超伝導の微視的実証

最近、超微小空間に閉じ込めた超高圧下硫化水素で驚くべき高温(Tc=203K)の超伝導が発見されました。応用上はバルク体での実現が必須であり、世界中を巻き込んで超伝導物質探索が行われていますが、まだ室温に迫るような高温超伝導物質は発見されていません。フォノンを媒介としたBCS理論(1957)で説明される通常金属の超伝導に対し、近年発見されてきた銅酸化物高温超伝導(1986)ではスピン機構が有力視されており、超伝導が起こるメカニズムに驚くべき多様性があることがわかってきました。未来の革新的な室温超伝導実現の夢に向け、我々はフォノンやスピン以外の根本的に全く新しい超伝導機構が期待される物質の探索に近年力を入れてきました。その中で、原子価スキップ元素をドープした新奇超伝導体で提唱されている「原子価スキップ現象に由来する新しい超伝導機構」の可能性に着目しています。例えば、Tlイオンの場合+1価(6s軌道に電子2個)か+3価(6s軌道に電子0個)しかとれず、中間の+2価(6s軌道に電子1個)のエネルギーが高いのでとれません。それら+1価(2電子)か+3価(空)の状態が縮退する状況が起これば、電荷2eをもつ束縛2電子が伝導電子と混成して電荷近藤効果を示すと共に新しいタイプの超伝導の舞台になりうることが理論的に提唱されています。我々の現在までの研究で、その候補物質の一つであったPb1-xTlxTeにおいて、局所的な原子価揺らぎに伴う電子状態の異常を原子スケールで空間分解して観測することに成功し、さらにその異常が超伝導を示す組成でのみ観測されることを明らかにしました。本研究においてその異常の本質をさらに詳しく調べ、原子価スキップ現象と超伝導の相関をミクロな視点で実証したいと考えています。また、類似する新しい物質群へ研究を拡大し、新奇超伝導機構の物質探索に向けた研究へと展開したいと考えています。

(左上図) 新しい超伝導メカニズムの可能性が指摘されている新奇な超伝導体(Pb1-xTlx)Teの相図。(右上図) 理論から示唆される電荷近藤効果の概念図。(下図) 我々のNMR実験から明らかになってきた原子価スキップ現象に由来する局所異常電子状態の概念図

(左上図) 新しい超伝導メカニズムの可能性が指摘されている新奇な超伝導体(Pb1-xTlx)Teの相図。(右上図) 理論から示唆される電荷近藤効果の概念図。(下図) 我々のNMR実験から明らかになってきた原子価スキップ現象に由来する局所異常電子状態の概念図

 

参考URL

http://www.mukudalab.mp.es.osaka-u.ac.jp/