研究ラボ紹介

新領域開拓

一分子計測データに対する高頻度データ解析

研究代表者:深澤 正彰 システム創成専攻・社会システム数理領域

共同研究者:岩城 光宏 理化学研究所 生命システム研究センター

共同研究者:Alexandre Brouste Université du Maine, Département de Mathématiques

共同研究者:藤田 恵介 理化学研究所 生命システム研究センター

共同研究者:高畠 哲也 システム創成専攻・社会システム数理領域

生体分子システムの動態解明へ向けた,一分子計測データの統計解析

20世紀初頭,全ての物質が原子からなるという原子論は単なる仮説に過ぎませんでした.顕微鏡でも見えない原子,分子の存在を立証する方法がなかったからです.アインシュタインは溶媒分子の存在を仮定して,溶媒中の粒子のブラウン運動に関する,ある計算を行いました.現代的に解釈すると,ある確率微分方程式の解の分布を計算していたことになります.1908年前後, ペランはブラウン運動する粒子の軌跡を30秒毎に記録して,その結果がアインシュタインの計算と整合的であることを示しました.ここで初めて原子論が決定的となります. 

現在の計測技術では,ブラウン運動する分子一つの軌跡をミリ秒以下の間隔で高頻度に記録できます.特に生体分子システムの動態解明を動機として,この一分子計測データが近年注目されています.分子の軌跡を精密に解析すれば,例えばその分子を拘束するポテンシャルの情報が得られるはずです.しかし今のところ,このデータの解析に,確率微分方程式モデルの高頻度データ解析理論は利用されていません.高頻度データ解析理論は近年,金融時系列の解析を念頭に発展してきました.高頻度データは古典的な統計理論の対象とは異なる構造を持ち,解析に注意を要することがわかっています.この研究プロジェクトでは,高頻度データの数理解析,分子システムのモデリング,一分子計測技術開発及び実データ解析を双方向に組み合わせて,生体分子システムの動態解明につなげる,数学と医学・生物物理分野にまたがる新しい研究領域を創成します.

まず最初は,心筋収縮の動態解明を動機として,ミオシン分子の一分子計測データを扱います.一分子計測データ特有の数理的構造を明らかにするとともに,ミオシン分子を拘束するポテンシャルの形状推定などの問題に取り組みます.

 

ランジュバンモデルでは,データが高頻度になると,分子の軌跡は非拡散的になる.

ランジュバンモデルでは,データが高頻度になると,分子の軌跡は非拡散的になる.

 

参考URL

http://www.sigmath.es.osaka-u.ac.jp/~fukasawa/

http://www.qbic.riken.jp/cdo/iwaki-subg/index.html