研究ラボ紹介
新規課題 新規領域開拓
グラフェンを用いた界面での薬剤評価プラットフォームの創出
研究代表者:小野 尭生 機能創成専攻・機能デザイン領域
研究分担者:Sonia Antoranz Contera Department of Physics, University of Oxford
研究分担者:中北 愼一 香川大学 医学部
研究分担者:渡邊 洋平 京都府立医科大学 大学院医学研究科
固液界面での生化学反応を2次元材料で解き明かす
固体と液体が接する界面は地球上に普遍的に存在し、その普遍性ゆえに極めて多様な反応が生じる場となっています。例えば、生物にとって最も重要な界面と言える細胞上の固液界面は、ウイルス感染に関わる多くの生化学反応の場となっており、それらの反応をターゲットとした感染症治療薬が作用する場ともなっています。こうした界面は様々な点で、バルク溶液中とは異なる場であるにもかかわらず、従来の薬効評価ではこのことはあまり意識されてきませんでした。界面はナノスケールの微小領域であり、存在する物質の量が少なく、計測が難しかったことが、その大きな理由の一つです。
本研究では、周囲の物質の電荷に極めて鋭敏に応答する2次元材料グラフェンを用いて、界面での反応と薬効を評価する新たなプラットフォームを構築します。モデル系としてインフルエンザウイルスが持つ酵素ノイラミニダーゼ(NA、感染細胞からのウイルス放出時に細胞表面のシアロ糖鎖を切断する)とその阻害薬(リレンザ®など)に着目し、NAによるシアロ糖鎖の切断や薬剤による切断の阻害をリアルタイムに高感度計測します。一方でグラフェンによる電荷の計測は、界面の面内・面直方向の反応座標の特定は不得手です。そこで、液中原子間力顕微鏡を用いて反応に伴う界面の変化を形態的にも評価します。こうした学際的な研究を推進するため、ナノ・マイクロ科学、生物物理学、糖鎖生化学、ウイルス学をそれぞれ専門とする国内外の研究者でチームを編成しました。このチームで、生化学反応計測と創薬に新たな機軸をもたらし、反応場としての界面の重要性を実証することを目指します。
参考URL
https://bnf.me.es.osaka-u.ac.jp/