本研究では、光エネルギーと電気エネルギーの双方を利用することで、これまでに例のない高活性な触媒種の創出を目指し、それらを用いて安定な有機化合物を効率的かつ精密に変換する触媒反応の開発に取り組む。有機合成化学は、生活の基盤となる様々な物質の供給を可能にし、現代社会の豊かさや進展に多大な貢献を果たしてきた。その一例として、2010年にノーベル化学賞を受賞したパラジウム触媒によるクロスカップリング反応は、創薬や材料化学の分野に革命的な進展をもたらした。また、近年では電気や光エネルギーを駆使し、一電子酸化還元過程で生成される反応活性中間体“ラジカル”を制御して利用する技術が急速に発展し、新しい有機合成の可能性が拓かれている。しかし、自然界での光合成が安定な分子を利用し、高付加価値な化合物を合成するのに対し、これに匹敵する人工的な精密有機合成技術は未だ発展段階にあり、エネルギー問題の解決に直結するには至っていない。そこで本研究では、光と電気エネルギーの相乗効果を発揮させ、遷移金属触媒と組み合わせることで新たな高活性触媒種を生成し、未踏の有機合成プロセスを構築することを目指す。

参考URL

https://www.chem.es.osaka-u.ac.jp/poc/