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計算科学を活用した新規機能性リン化合物の戦略的高圧合成

 

研究代表者:石渡 晋太郎 物質創成専攻・物性物理工学領域

研究分担者:José A. Flores Livas  Sapienza University of Rome

 

 

第一原理計算を活用し、新規リン系化合物の高圧相を網羅的に開拓する

近年、計算機の大幅な性能向上とデータベースの発展により、マテリアルズインフォマティクス(MI)と呼ばれる新しい分野が注目を集めています。これは、物性・材料科学と情報科学の融合分野であり、これまで超伝導体・熱電変換材料・電池材料といった実用性材料の開拓への活用が進められてきました。MIの発展により、①与えられた化学組成をもつ物質がある温度と圧力においてとりうる最安定構造の予測、さらに②その物質が示す物性の予測が可能になり、最終的に非常に効率的な機能性材料開発ができるようになると期待されています。しかしながら、現時点では①の構造予測の段階から克服すべき課題が山積しています。最近、第一原理計算を活用した水素化物系高温超伝導体の発見が大きな話題となりましたが、これらは単位胞に含まれる結晶学的なサイト数が比較的少なく、また非磁性体であり、複雑な構造や磁性をもつ系の構造探索は困難な状況にあります。このような状況を打開するため、ベイズ推定や機械学習の活用が進められていますが、その活用法は人間の判断に委ねられており、一筋縄ではいかない状況になっています。

本研究では、リンを主成分として含む2元系化合物の高圧相に注目しました。最近高圧相の一種である黒リンが、劈開性のある層状構造をもち、また超高移動度の電子を内包することから、次世代電子材料として大きな注目を集めています。単体のリンは、黒リン以外にも様々な高圧相が存在することが明らかになりつつありますが、二元系リン化合物の高圧相の探索は、合成条件の自由度が高いために遅れていました。本研究では網羅的第一原理計算を活用することで圧力と組成に関する合成条件を絞り込み、新たな電子材料として有望なリン化合物高圧相の効率的開拓を進めます。特に磁性をもつリン化合物に関しては、磁気輸送測定も行い、新たな機能性材料としての可能性を探ります。

 

図: Sr-P化合物の生成エネルギー計算。横軸はSr1-xPxにおけるリンの割合(x)であり、実線はこれらのエネルギーの凸包(convex hull)と呼ばれるもので、Sr3P4やSrP3のようにこの線上にエネルギーが位置する化合物だけが基底状態で安定相となることを示している。

図: Sr-P化合物の生成エネルギー計算。横軸はSr1-xPxにおけるリンの割合(x)であり、実線はこれらのエネルギーの凸包(convex hull)と呼ばれるもので、Sr3P4やSrP3のようにこの線上にエネルギーが位置する化合物だけが基底状態で安定相となることを示している。

 

参考URL

http://qm.mp.es.osaka-u.ac.jp