研究ラボ紹介
新規課題 個人研究
多ビット線形メモリスタに向けた高精度AI駆動制御
研究代表者:DIAO ZHUO システム創成専攻・電子光科学領域
ディープニューラルネットワークの演算に対応できるAIチップの実用化に向けて
メモリスタは電圧印加によって抵抗スイッチング(RS)するデバイスです. アナログメモリスタは積和演算を単一素子で実現できるため, GPUの代わりに, 高い次元の行列演算が必要なディープニューラルネットワーク(DNN)を高スループットと低消費電力で駆動することが期待されています. しかし, アナログメモリスタを用いた数値計算では, マルチビットを表現する複数の数値状態を1つのデバイスで扱う必要があるため, RSの線形性やビット精度に制限があり, 計算誤差が生じます. ニューラルネットワークでは, このアナログ的な計算誤差が数値と共に伝搬するため, DNNの複雑さが増すほど, アナログメモリスタで実現できるDNNの精度が低下します. 特に, 大規模言語モデルや生成AIなどの実用的なAIモデルでは, 多くのdecision spaceを必要とするため, アナログメモリスタをAIチップとして実用化するためには, 計算精度の信頼性を向上させることが求められます. これまでの研究では, デバイスの材料を最適化することでRSの線形性を改善することが試みられてきましたが, RSの電気制御は定型的なルーチンで行われることが多く, RSの時系列状態に応じた最適な電圧印加アプローチを導入する研究は十分ではありません. そこで本研究では, AIを用いた電気制御でデバイス内のドーパントイオン分布を制御することによって, 線形かつ多ビットのRS特性を実現する技術を確立します. これにより, 複雑化したAIモデルの実装ができるアナログメモリスタを用いたAIチップの開発を目指します.