研究ラボ紹介

新規課題  新規領域開拓

「脂肪滴の個性」から脂肪性肝疾患を捉える分子分光学の創成

研究代表者:南川丈夫 システム創成専攻・電子光科学領域

研究分担者:加藤遼 システム創成専攻・電子光科学領域

研究分担者:長谷栄治 徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所

研究分担者:清水真祐子 徳島大学大学院医歯薬学研究部疾患病理学分野

研究分担者:常山幸一 徳島大学大学院医歯薬学研究部疾患病理学分野

疾患のメカニズムを「光」で読み解く

代謝性機能障害に伴う脂肪性肝疾患(MASLD)は,世界人口の約40%が罹患し,その病因解明と治療法の開発は喫緊の課題です.MASLDの初期の組織学的特徴は似たような脂肪蓄積であるにも関わらず,良性の単純性脂肪肝と,炎症を伴う悪性の脂肪肝炎(MASH)に,その疾患の進行が分かれます.これは,蓄積する脂質の違いが関連していることが示唆されていますが,蓄積脂肪の疾患に対する病理機序は未解明です.また,超早期の病態においては,肝炎や線維化等の予兆を判断できる組織学的特徴が現れにくく,肝炎発症前の状態での良性・悪性の予後診断は実現されていません. 本研究では,蓄積した脂肪(脂肪滴)中の脂質分子種,分子構造,脂肪滴内結晶,硬さなどの「脂肪滴の個性」を捉える光計測法(分子分光学)を開拓し,脂肪滴の個性に基づいた「脂肪滴機能病理学」という新たな学際的学術領域の開拓を目指します.従来, MASLDは主としてゲノムやタンパク質を対象とした分子生物学的アプローチや組織や細胞の形態学的アプローチが行われてきましたが,蓄積脂肪自身の物性に着目した報告はほとんどありません.我々は,ラマン分光法,赤外分光法,ブリルアン分光法,非線形分光法などの「光と分子の相互作用」を活用した独自の分子分光学を駆使して脂肪滴の個性を捉える方法論を開拓し,これまで着目されてこなかった蓄積脂肪の重要性を明らかにします.それにより,従来のMASLDの病因解明と治療法開発における固定概念を覆し,分子分光学という異分野の視点から医学に新たな概念・価値・発想をもたらすことに挑戦します.さらに,研究の過程で得られた知見をもとに,MASLD診断学・治療学という応用工学につなげます.

 

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参考URL

https://www.molecular-photonics.com/j/