研究ラボ紹介

新規課題  共同研究

キラル構造転移現象の一般化に向けた化合物の探索と進行条件の理解

研究代表者:桶谷 龍成 物質創成専攻・機能物質化学領域

研究分担者:Yves Geerts Université Libre de Bruxelles, Faculté des Sciences

新奇キラル対称性の破れ現象を通じて、分子レベルの運動と熱力学的描像をつなぐ

本研究は、分子性結晶における新しいキラル対称性の破れ現象「キラル構造転移」を一般化し、その発現条件と進行機構を解明することを目的とする。キラル構造転移とは、もともとキラリティをもたないアキラル結晶が、外的刺激によりキラルな結晶構造へと単結晶―単結晶で転移する現象である。代表者はフェノチアジン誘導体において、溶媒を介さず固体中で自発的にキラリティが発現する初の事例を発見した。この現象は、液相におけるビエドマ熟成などの化学平衡的なプロセスとは異なり、結晶相内部における対称性の自発的破れという新しい概念を提示するものである。  本研究では、ブリュッセル自由大学との国際共同研究により、Directional crystallization法を導入し、結晶転移の界面で生じるエネルギーの流入出を熱力学的に解析する。これにより、キラル構造転移を駆動する分子運動と熱力学的なパラメータとの相関を明確化する。さらに、偏光顕微分光やX線構造解析を併用して転移界面を時空間的に追跡し、キラル結晶核の生成と伝搬過程を分子レベルで可視化する。以上の研究を通じて、結晶中でのキラリティ発現の一般原理を確立し、将来的には光・熱応答性を備えたキラル分子性材料の創成へと展開することを目指す。

 

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代表者の発見した自発的なキラル対称性の破れ現象とDirectional crystallizationの概略図

 

参考URL

https://www.chem.es.osaka-u.ac.jp/mac/