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ナノ空間におけるフォノンによる熱輸送機構の解明

研究代表者:花村 友喜 物質創成専攻・未来物質領域

原子間の相互作用がつくる新しい熱の流れを探る

 真空中の物体間では、電磁波による黒体輻射によって熱が輸送されます。物体間の距離が熱輸送を担う電磁波の波長(数マイクロメートル程度)より小さくなると、物質表面近傍に局在する電磁場が寄与し、熱輸送が大きく増大することが知られています(近接場熱輻射)。このように、真空中の熱輸送の担い手は電磁波のみであると長く考えられてきました。 しかし、近年、物体間の距離が数ナノメートル以下となるようなナノギャップでは、電子のトンネル効果や格子振動(フォノン)によっても熱が輸送され得ることが、走査トンネル顕微鏡を用いた計測や第一原理計算から示唆されています。フォノンによる熱輸送は、物体を構成する原子間にはたらく力学的な相互作用を介して格子振動が伝わることで生じると考えられますが、ナノギャップの界面には多様な相互作用が存在するため、その詳細なメカニズムは未解明のままです。 本研究は、ナノギャップにおける熱輸送現象においてフォノンがどのように寄与しているのかを実験的に明らかにすることを目的とします。そのために、微細加工技術を駆使して熱輸送測定用のナノギャップ素子を開発しました。ギャップを構成する材料や表面物性を系統的に制御し、原子間に働く相互作用を変調することで、フォノンによる熱輸送を支配する要因を明らかにします。 このようなナノスケール空間の熱輸送機構を解明することで、本来は「何も存在しない」はずのナノギャップそのものを、新しい熱輸送媒体として積極的に利用する道が拓けると期待されます。

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ナノ空間におけるフォノンによる熱輸送の概念と測定用素子の概要

参考URL

http://molectronics.jp/