研究ラボ紹介

新規課題  共同研究

分子に働く力を測る:Coiled-coilメカノセンサーの開発

研究代表者:齋藤 匠 機能創成専攻・生体工学領域

研究分担者:LEE Juhyeong  基礎工学研究科機能創成専攻生体工学領域 博士前期課程1年

(英語)Developing a novel coiled-coil mechano-sensor to quantify forces on intracellular molecules

 細胞は分子スケールの力を起点に様々な生化学的機能を制御します。これを細胞のメカノトランスダクションと呼びます。メカノトランスダクションの一例を図(左)に示します。細胞には細胞骨格と呼ばれる骨組みがあり、その両端が焦点接着斑と呼ばれる分子複合体を介して細胞外に接着しています。足場である焦点接着斑は、細胞内外の力が釣り合うようにそのサイズを変化させます。これがうまく機能しないとき、すなわち細胞内外の力のバランスを調整できないとき、細胞は周囲の力学環境に適応できず、細胞内炎症促進反応が持続化します。そのため,単一細胞レベルのメカノトランスダクション機能の低下が慢性的な炎症反応や動脈硬化症など個体・組織スケールで様々な炎症性疾患の原因の一つとなります。  このようにメカノトランスダクションに関する定性的な研究は多く報告されている一方で、それに関わる分子が「どれくらいの力をどのように伝達しているのか」は技術的に計測が困難なため不明なままです。そこで我々は、生きた細胞内の分子に働く力計測のためのセンサー(coiled-coil張力センサー)を開発中です(Saito T. et al. 2025. Ren Y...and Saito T. et al. 2025)。Coiled-coilはアミノ酸でできた数nmの構造物です。無負荷の状態では、coiled-coilは閉じていますが、その両端に力がかかると開きます(図(右))。つまり、この開閉を検出することで、数pNの微小な力を計測できます。我々は緑色蛍光タンパク質の一部をcoiled-coilセンサーの中間に使用することで、センサーの開閉(張力の大小)を生細胞内で検出することに成功しています。

 

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細胞のメカノトランスダクション機構解明に向けたcoiled-coil張力センサーの開発

 

参考URL

http://mbm.me.es.osaka-u.ac.jp/?page_id=14

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11760715/

https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2025.05.14.653946v1.abstract