研究ラボ紹介
継続課題 個人研究
半金属材料でのフレキソエレクトリック効果の検証と巨大応答材料の開拓
研究代表者:高橋 英史 物質創成専攻・物性物理工学領域
新しい電気機械応答の可能性
本研究では、トポロジカル半金属と呼ばれる物質群において新機能の創出を目指し、固体が持つ量子位相(ベリー位相)を制御することによる新しい電気―振動応答現象の確立とそのための材料開拓を行います。これにより、振動発電デバイスや振動センサーの可能性の他に、量子コンピュータのためのトポロジカル超伝導探索のベンチマークとなるような、新しい実験手法と材料開拓を目指します。
ベリー位相は物質内部にエネルギー散逸の少ない電流(トポロジカル電流)を生み出すため、これを効率的かつ簡便に制御できれば、これまでのような散逸電流を制御するエレクトロニクスを超える機能が期待できます。ベリー位相は固体中の伝導電子によるバンド構造や多数のスピンが作るスピン秩序において特異な構造(トポロジカル構造)がある場合や特殊な超伝導電子対(パリティ混成)の形成により有限になります。しかし、ベリー位相は空間反転対称性や時間反転対称性がある結晶では全体で打ち消されてしまうため、機能応答を実現するには何らかの方法でこれらの対称性を破る必要があります。例えば圧電効果のような電気-振動変換は極性構造をもつ絶縁体材料(強誘電体)では広く知られています。一方で、金属材料では光や電場といった電気的な外場は伝導電子の遮蔽効果により結晶内部まで影響を及ぼさないため、対称性の制御が難しく観測されません。そのため、トポロジカル半金属のような金属材料でのベリー位相に由来した機能応答は限定的でした。そこで本研究では、結晶の対称性に依存しない新しい手法として「フレキソエレクトリック効果」を用いた新しい電気-振動応答現象の実験手法を開発し、新規な振動発電や振動センサーの材料開拓を目指します。