研究ラボ紹介

新規課題  共同研究

流体力学が紐解く細胞3次元浮遊培養法の物理機構

研究代表者:渡邊大記  機能創成専攻・非線形力学領域

研究分担者:堀口一樹  物質創成専攻・化学工学領域

物理の解明とそれに基づく培養方法の提案

ヒトiPS細胞を用いた再生医療では、既に約10種類の臓器や神経細胞が臨床段階に達していますが、それを真に実現にするためにはiPS細胞の大量培養が必要です。そして、その要となる「3次元浮遊培養法」は未だ確立されていません。その理由の一つとして、現在の浮遊培養がブラックボックス化している点が挙げられます。浮遊培養は、固体粒子や培養液の流れ、気泡などが絡み合う非常に複雑な流体力学の問題を含んでおり、理論的な分析や、実験的な観測だけで培養槽内で起きている全てを把握するのは困難です。 また、時空間における物理現象を解析する優れたツールである数値シミュレーションにおいても、以前は浮遊培養のような複雑な流動現象を扱うことが困難でした。しかし近年、コンピュータの性能が飛躍的に向上し、数値シミュレーションの手法も改良されたことで、浮遊培養の複雑な流動現象を正確に把握できるようになりつつあります。これらの背景から、浮遊培養の物理機構の解明は、今取り組むべき課題のひとつだと考えます。 一方で、数値シミュレーションを行う流体力学者は細胞培養の深い知識を持たない場合が多いため、細胞培養に精通した研究者との協働が不可欠です。そこで本研究では、流体力学の専門家と細胞培養の専門家が互いに協力し、浮遊培養の物理機構を解明し、それに基づく新しい浮遊培養法や操作条件の決定法を提案することを目指します。具体的には、細胞培養における凝集体形成と細胞損傷の物理機構を数値シミュレーションにより解明し、浮遊培養効率の定量的な予測を試みます。さらに、研究代表者が保有する「撹拌翼無し撹拌」技術を活用し、ヒトiPS細胞の大量培養の実現を目指します。

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